大判例

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東京地方裁判所 昭和46年(ワ)6811号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三 損害賠償請求について

本件退職金支払契約の締結に際し、被告会社が原告に対し、退職金の支払いを確保するため、被告会社は昭和四五年九月から昭和四六年三月まで毎月二〇日に金二七〇、〇〇〇円ずつを東京信用金庫浅草支店に積み立て最終積立日の同月二〇日に全額を原告に支払うことを約し、同日までに全額の積立てを完了したこと、それにもかかわらず、被告会社の代表取締役である被告早川は、右支払期日にその支払いを差し止め、原告訴訟代理人が昭和四六年四月二日に被告会社に対し内容証明郵便で支払いを催告したのにその支払いを拒否し、原告代理人藤田信祐が同年六月二二日被告早川に面談して請求したのに、その支払いを拒否したことは、当事者間に争いない。また<証拠>によれば、原告は、昭和四六年八月被告早川宅に赴き、本件退職金の支払いを請求したところ、同被告はこれを拒否し、「取れるならとつてみろ、裁判でもなんでもやれ。」と言い、そのうえ「お前ら会社に迷惑をかけたから払わない。お前らは人間ではない。」等と暴言をはいたこと、原告らは、困つて労働基準局に行つて相談したところ、同基準局から被告会社に対し、退職金を支払わない理由について問い合せがあつたことが認められる。

以上認定の事実によれば、被告会社は原告に対し、原告主張の退職金を支払う義務があり、この支払いを約し、支払いの資金の準備も完了したのに、被告早川は、被告会社の債務の履行を故意に執拗に、しかも暴言をはいたりして妨害しているのである。そうすると、この妨害行為は著しく不当なもので違法性を帯びるから、不法行為を構成するものと解すべきである。

<証拠>によれば、原告は原告訴訟代理人である弁護士山田重雄らに本件退職金請求の訴えの提起を委任し、着手金および成功報酬金を支払うことを約したことが認められる。ところで、被告会社の代表取締役である被告早川が前記のとおり被告会社の原告に対する退職金債務の履行を妨害している限り、原告が弁護士に退職金請求訴訟の遂行を委任して、これが権利の実現を図るのは、やむを得ない行為であると認められるから、同被告は原告に対し、不法行為による損害賠償として、右訴訟委任により原告に生じた損害を賠償する責がある。そして同被告が被告会社の代表取締役であることと同被告の前記債務履行妨害行為の性質および態様から見れば、同被告の右行為は、被告会社の代表取締役としての職務を執行するについてなされたものと認められるから、被告会社も右の損害を賠償する責がある。 (岩村弘雄)

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